決算対策について 1

「決算」とは?

 中小企業の経営者の皆様は、「決算」をどのように捉えていらっしゃるでしょうか?
 「決算」には、一般的に多くの中小企業が行っている「月次決算」・「年次決算」、小売業・飲食店業など日々の業績をタイムリーに把握したい会社が行っている「日次決算」があります。(余談ですが、日次決算といえば毎年決算短信を3月期決算の中で一番に発表する㈱あみやき亭(東名で上場)が有名です。毎年営業日1日目の午後の早い時間には発表しているようです。)

 少し大雑把ですが敢えて分類すると、「月次決算」・「日次決算」…管理会計用、「年次決算」…外部関係者報告・法的義務用といったところでしょうか?
 管理会計の観点から考えると、「年次決算」は対象範囲が1年と長く経営課題が明確になららないため、効果的なアクションを取るためにはあまり参考にならないでしょう。また、年次決算が終わる頃は、事業年度当初からほぼ1年経過しておりスピーディーな経営判断にも役立てることが出来ず、端的に言うと「年次決算」は経営の視点では「もう終わったこと」だと思います。管理会計の最大の目的は経営に資する情報を提供することであり、その公開は経営者・経営幹部等の内部関係者に限られます。そのため、会社がその経営課題にスピーディーにかつ効果的に対処出来るための情報を提供するためには、その計算の単位は、「月次決算」又は「日次決算」が適切だと思います。

  一方で、株主・銀行・取引先・官公庁等々の外部関係者への報告、申告納税の法的義務を果たすための税務申告は、その手段である決算書は会社法及び会計の原則に従って作成することが要請されています。そして、会社法及び会計の原則が計算の単位を事業年度としているため、決算書は「年次決算」が基本となります。その「年次決算」を基準に作成された決算書によって、会社の財産・経営状況を正しく外部関係者に報告すること、及び、適正な税務申告を行い法令遵守を果たすことは、経営基盤の安定のためには必要不可欠なものです。

「決算対策」とは「年次決算」の対策を事前に行うこと

 「決算対策」とは二つの考え方があると思います。一つ目は「年次決算」を、会社の将来などあらゆる視点から、現時点でとり得る一番よいかたちで外部関係者に報告ができるように、事前に検討を行うことです。そして二つ目は、会社の資金流出をできるだけ少なくするため、法令遵守の範囲で節税を事前に検討することです。

 具体的には、例えば銀行・官公庁への報告を考えると黒字決算が最優先される場合があるでしょう。「利益を出すためには小手先ではない日々の経営努力が必要だ」というのは正論ですが、事業規模が小さい中小企業は企業努力以外の部分に業績が大きく左右されることもあり、一方で現実的には銀行の企業評価・官公庁の入札の条件は形式的に判断されることもあり、会社法・会計の原則の範囲内で選択できる最善策を検討することも必要でしょう。
 また、節税対策を考えると、例えば特定経営力向上設備等の即時償却・税額控除の適用を受けようとする場合は、対象設備導入前の約2か月前から所轄の経済産業局への確認など事前の手続きが必要になります。
 その他にも、翌期以降の資金繰り等、各々の会社でそれぞれの観点に優先順位があり、その一方で会社が「年次決算」でとり得ることができる対策・方針も数多くあります。

 そのため、きちんと法令を遵守し、その範囲で会社が最善の対策・方針を選択するために、決算期末の2~3か月前から決算シミュレーションによって検討・検証を行い、「決算対策」を行うことが重要だと思います。

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